ターミナルケアでは、がんなどでもう回復の見込みのない終末期の患者を受け入れ、肉体的苦痛や精神的苦痛を取り除くケアをします。延命治療は行われないので、患者は徐々に死に近づいていきます。終末期の患者は、たとえばがんであれば、がん性疼痛などの痛みが強いため、看護師は医師の指示のもとモルヒネの投与などで痛みを取り除くケアをします。ほかにも呼吸困難や褥瘡などがあればその苦痛をできるだけ取り除かなければなりません。また患者は死に対する恐怖や不安により、精神的に不安定な状態に陥り、5人に1人は強いうつ状態にあります。さらに家族に金銭的なことで迷惑をかけるのは嫌だ、自分だけがなぜこんな病気になるのだという思いにさいなまれます。したがって看護師には、肉体的苦痛だけでなく精神的苦痛を取り除くことが期待されるでしょう。
ターミナルケアの患者と看護師は長い時間接することが多く、患者やその家族からとても信頼される存在です。患者や家族は看護師を頼っているため、看護師の言葉や態度は患者や家族にとって大きな安らぎとなります。患者の精神的な苦痛をすべて取り除くことは不可能とも言えますが、看護師が誠心誠意、患者の話を傾聴し、患者に寄り添って共感することで、患者の不安や恐怖が和らいでいくことが多いのです。自分の不安や恐怖を看護師に話すことで、自分自身で死を受容することができ、穏やかな心境になることもあります。ターミナルケアにおいて、看護師は患者の人生の最期を見守るという点で、とても大きな役割を担っています。高齢化が進むなか、ターミナルケアの看護師の存在はますます重要なものとなるでしょう。
ターミナルケアのことをもっと知ってほしい→→看護師のためのターミナルケア入門